口腔外科とは、口の中の外科的な治療を行う科です。代表的な治療は、顎骨のなかに埋まっている親知らずの抜歯や口の中のできものの切除などがあります。その他、顎骨炎、口内炎、神経痛、癌など、顎や口腔内に起こる病気の診査・診断をし治療します。 また、インプラント治療も、口腔外科治療になりますので、インプラントの埋入からメンテナンスに関しましても、安心して治療していただけます。
[1] 炎症
親知らずの周囲の感染、むし歯による根の先の化膿による急性化等により、頬が腫れて顔が非対称になるようなやや重い炎症を扱います。抗生剤により、炎症を鎮めた後、原因歯の治療を行います(抜歯、根の治療等)。炎症の状態はおおまかに下記に分類されます。
頬の腫脹 | 発熱 | 開口障害 | 治療 | |
---|---|---|---|---|
軽度 | なし | なし | なし | 抗生剤内服 |
中等度 | 限局的に膨らむ | あり37℃代 | 出ることが多い | 抗生剤内服または点滴 |
重度 | 末広がりの膨らみ | あり38℃代 | 著明 | 入院による消炎 |
[2] のう胞
簡単に言えば、「膿の袋」です。進行したむし歯が原因で根の先(の骨の中)にできるのが、最も一般的です。上記の「①炎症」の原因となり、腫れてきたりして来院されることが多いですが、自覚症状がないままのこともあります。レントゲンで境界明瞭な円形の透過像を認めます。治療は、歯肉を切って病変を摘出します(大きい嚢胞の場合は開窓にします)。歯の状態によっては原因歯を抜歯することがあります。大きい(顎の骨の中で広がっている)ときは、入院による治療が必要になります。
[3] 顎関節症
口を開けると、痛い、または雑音が鳴る、等の症状です。口を開けたり閉めたりするとき以外は痛みがないのが特徴です。大きく、筋肉由来と関節およびその周囲組織由来と骨の形(進行例)に分けられます。治療は、保存的治療(手術をしない治療)がほとんどで、スプリントというマウスピースを作成します。痛みに比べ、雑音は改善しにくい傾向があります。
[4] 外傷
転倒や衝突(または殴打など)による、歯の破折、脱臼により歯が動く、歯茎の周りから出血することで、来院されます。
< 歯が欠けている場合 >
- 歯の先だけ折れているとき…詰め物の(または冠を被せる)治療をします
- 歯の真ん中で折れているとき…神経を抜いて、冠を被せる治療をします
- 根っこが折れているとき…神経を抜いて冠を被せる(または歯を抜く)治療を行います
< 歯が動く場合 >
歯が抜けかかっている、もしくは歯を支える骨ごと折れている場合に分かれますが、いずれも動いていない歯とボンドでつなげて、固定する治療を行います。
- 根っこが折れているとき→Ⅰ歯の破折
< 歯が抜け落ちた場合 >
歯が衝撃で取れてしまったときは、できるだけ早く抜けたところに戻して、固定する治療を行います。歯が生着するかどうかは、抜けたときの状況(場所、治療までの時間)で異なります。
※抜けた歯は、牛乳もしくは生理食塩水につけて持参してください。顎の骨が折れているときは入院による治療(顎間固定または手術)が必要となります。
[5] 粘膜疾患
形態、症状により診断、治療を行います。
< よく見られるもの >
- 表面白色平坦、境界明瞭、接触痛強い→口内炎
(療内容:塗薬) - 表面粘膜色、やや膨隆、接触痛なし→粘膜嚢胞
(治療内容:摘出) - 表面白斑状、接触痛少しあり、治りにくいが形状不変→扁平苔癬
(治療内容:清掃指導、金属アレルギー検査。)
治りにくいもの、形が変わるものは、粘膜を切り取って顕微鏡検査を行います。
[6] 睡眠時無呼吸症候群
「いびき」を伴う不眠による、頭痛、倦怠、集中力減退、等が主な症状です。睡眠時のモニタリングにより、重症度を診断します。軽度の場合、内科の先生と相談の上(睡眠中、下顎を前に出す)、スリープスプリントを作製します。
[7] インプラント治療
歯のないところの顎の骨に人工の歯根を植立します。
治りにくいもの、形が変わるものは、粘膜を切り取って顕微鏡検査を行います。
以上が、外来で行う主な疾患です。
[8] その他口腔外科で扱う症状
< その他の症状 >
- 顎変形症(矯正科医により診断)
- 悪性を含む、粘膜または顎骨にできる腫瘍
- 唇顎口蓋裂(妊娠中または、出生時に認められる)